2008年01月04日
 ■  より良い人間関係を築くためのヒント ~3~

大学で「社会心理学」の授業を担当しています。社会心理学は「人間の社会的行動」、つまり「人間が社会生活の中で、お互いに影響を与えながら、どのように行動するのか」を明らかにします。そして、そのテーマには「他者をより良く理解し、自分を適切に表現し、相互理解を深め、より良い関係を築くこと」に、いかに貢献できるか、があります。

このシリーズでは、不定期ですが「より良い人間関係を築くためのヒント」を記します。

~3~ 自分の優しい気持ちを表現して、相手に伝える。

あるとき、バスの中で、このような光景を目にしました。

70歳ぐらいの女性がバスに乗り込んできました。女性は車内、中ほどの手すりにつかまり、前を向いています。すると、すぐに、その女性に気づいた男子高校生が席を立って前に進みました。

「さわやかな高校生がいるものだなあ」とほほえましく思いました。しかし、その高校生の席は女性の少し後ろ。女性は席を譲ってくれたことに全く気がつきません。高校生は照れくさかったのでしょう。何も言葉をかけなかったのです。そのうち、次の停留所にバスが着き、乗ってきた男性が、その席に座ってしまいました。
 「あれあれ・・・。」

結果的には、その女性の横に座っていた男性が気づき、その女性は座ることができました。けれども・・・。


このときから、思いやりや優しい気持ちは適切に表現して、相手に伝えることが大切だと思うようになりました。後方にいた私やだれかが「席を譲ってくれていますよ」と大きな声を出したり、次の停留所までが遠かったりすれば、その女性も気づいたのかもしれませんが、現代はそのような環境ではありませんよね。

コンビニエンスストアの店長をしている知人が言います。
「高校生のアルバイトの採用面接をするとき、短時間で判断することがとても難しい。よく言えば、ありのままで飾らない。少しズボンを下ろして、靴のかかとを踏み潰したまま、タメ口で面接を受けるため、きちんと働いてくれるのかどうか分からない。人手不足のため、この子、大丈夫かな? と不安を感じながら採用すると、気のよい子で、まじめに働いてくれることもあるし・・・」。

第一印象が悪いと採用されないこともあるのです。残念ですが、自分の良さや人柄が、そのうち分かってもらえる・・・悠長な時代ではないのですね。良さを分かってもらえる前に、つきあいが終わってしまう恐れもあるのです。

せっかく自分が持っている優しい気持ちや意欲は適切に「表現」し、相手に「伝えて」こそ、意味を持つのだと思います。「~2~」で書いたエチケットという知識やよいマナーは、優しい気持ちの表現方法、伝達方法であるともいえます。この点からもエチケットを得て、よいマナーを実践することの大切さをご理解いただけるのではないでしょうか。

昨日の電車の中での出来事です。

私の隣の座席が空いているところに、乗ってきた年配の男性が奥様に「ここに座りなさい」。私は、ご主人に席を譲ろうと「どうぞ」と立ちました。ところが、ご主人は、私の肩を軽くたたき「ありがとう。でも、大丈夫ですよ。どうぞ、おかけください」。奥様も「恐れ入ります。主人は元気ですから・・・」。

ご主人は80歳を超えていると思われましたが、背筋がピンと伸びています。我先に乗り込んで、どかっと座りゲームに興じたり、携帯電話を操作したりする若者と比べると、とてもステキな男性、まさに紳士・・・でした。

投稿者 Fcommu : 2008年01月04日 04:00

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