2007年05月19日
 ■  「顧客の視点」の前に、まずは顧客への感謝じゃないの?

 2005年10月25日、日経の朝刊に第7回日経フォーラム「世界経営者会議」の初日に展開された議論や講演の内容が掲載された。新生銀行のティエリー・ポルテ社長の講演内容から。「過去4年で拡大させた個人向けビジネスは、まず顧客の視点から始めた。顧客が既存の金融サービスに抱いていた不満は『休日にATMが使えない』『自分のお金を引き出すのに手数料がかかる』『あまりにも金利が低い』ということだ。こうした点を意識して準備し、万全の対応をめざした」。セブン&アイ・ホールディングスの鈴木会長。「お客さんの立場で将来から現在を考えた時に、全く違う世界が見えてくる」。
 「顧客の視点」「お客さんの立場」という言葉が目を引いた。商品やサービスを購入し、使用するのは顧客、消費者なのだから、顧客の視点が重要であるのは当然のことである。マーケティングのパラダイムが顧客志向にシフトして、すでにかなりの年月が経つというのに、いまだに「顧客の視点」が強調されるのは、それだけ「顧客の視点」を持つことが難しいことを物語っている。

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 先日、数社のマーケティング担当者のプレゼンテーションを聞く機会を得た。自社ブランドが選択される要因や商品開発の成功要因などが各担当者から示され、だれもが、顧客の視点を持つことの重要性と同時に顧客を理解することの難しさに触れた。しかし…。消費者を強く意識しているはずのマーケティング担当者であるにもかかわらず、だれからも「平素は私どもの商品をご利用(ご購入)いただき、ありがとうございます」といった消費者への感謝の言葉は述べられない。顧客接点の現場の気持ちを持つことはやはり難しいのであろうか。顧客への感謝の気持ちを持つことなしに顧客を理解し、顧客の視点を持つことができるのであろうか、と疑問の残るセミナーであった。

数日後、ある学会での株式会社ふくやの社長の特別講演。辛子明太子の創業社である。経営理念をテーマとした講演は、冒頭で「明太子が全国的に認知され、ご愛顧いただいていることの感謝」が述べられ、「お帰りには明太子をおみやげに。できれば、ふくやの明太子を…」とユーモアを含んで結ばれた。ふくやの各店舗では、お客様に「ごゆっくりどうぞ」とお茶がふるまわれる。観光客、出張族に「博多のおもてなし」の一役を買っているが、同社は経済産業大臣から顧客志向優良企業としての表彰を受けている。
 「CS(顧客満足)の出発点は顧客への感謝の気持ちから」。CSを考えるとき、いつもここに戻る必要があるはずだ。
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投稿者 Fcommu : 2007年05月19日 18:01

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