2007年04月10日
 ■  天性のサービスマインド

ある年、職場の送別会の幹事長になった。
参加者300名ほど。定年退職者の中には名誉教授の称号を受ける功績ある教員が数名。例年以上に不手際なく会を運ばなければならなかった。こんな年に幹事長になるとは運が悪い…。
送別会の会場はホテル日航福岡。営業部、宴会サービス部と数度の打ち合わせと料理の試食を済ませて当日を迎えた。私たち6名の幹事は、開始時刻の2時間前にホテルに入った。サービスの責任者と最後の打ち合わせを行うと、彼は「お任せください。時間までコーヒーでもお飲みになってお待ちください」と、私たちの心配をかき消すようにニコッと微笑んだ。
しかし、よく動く。ホワイエでコーヒーを飲みながら責任者の彼を見ていると受付の背後のカーテンの左右の長さ、受付テーブルにかけた白布の垂れ下がりの長さをチェック、会場の案内板、館内電話まで拭いている。掃除が行き届いていないはずはないのだが、彼は指紋ひとつ残さないように入念に磨いている。宴会場では、ひとつひとつのテーブルを念入りに見て回り床に落ちていた小さな葉を見つけ、そっと拾っていた。


cs7.jpg

定刻。会が始まった。華やかに送別の宴は進行していく。料理はテーブルで取り分けるスタイルのフレンチ。シェフ自慢の料理が次々に運ばれてくる。しかし、私たち幹事は、飲み物は不足していないか、退職者たちのあいさつの時間は…いろいろなことが気にかかり食事どころではなかった。すると彼は、私たちのテーブルには、食べやすいように一人一人のお皿に料理を盛り付けて持ってきてくれた。「幹事さんが楽しまないと会は成功しませんよ」。

cs8.jpg

彼をリーダーとするスタッフたちの細かな気配りのおかげで送別会は滞りなく終わった。退職者たちからも参加者からも「今日はありがとう。お疲れ様」と声をかけてもらった。ほっとした。
参加者を見送り、彼に礼を述べて帰ろうとしたちょうどそのとき。幹事の一人が、使った胸花を箱に入れ、その箱を縦にして紙袋に入れようとした。彼が「あっ」と声をあげた。「胸花がぐちゃぐちゃになってしまいますね。お待ちください。袋をお持ちいたします」。私たちの返事を待たずに彼は小走りに、引き出物などを入れる底の広い紙袋を持ってきてくれた。彼は気が付いたことをしないではいられないのだ。自分が気付いた細かなことを面倒だと思わずに自分でするのだ。彼に任せれば大丈夫と彼を信頼している客が大勢いるに違いない。

投稿者 Fcommu : 2007年04月10日 15:01

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://career-finders.net/pod/mt-tb.cgi/96

コメント

コメントしてください




保存しますか?

(書式を変更するような一部のHTMLタグを使うことができます)