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浅岡柚美の「磨こう! ヒューマンスキル」 » サービスの現場に必要な人はサービスを提供するスタッフ
よりよい人間関係を築くためのヒントサービス改善のためのヒント浅岡柚美プロフィール

サービスの現場に必要な人はサービスを提供するスタッフ

人気ランキングでいつもトップクラスのホテルで朝食を取ったときのこと。ジュース、卵、ハムと私たち4人が各々注文し、全員がパンはトーストを頼んだ。すると若いギャルソンが「甘いものはお好きではありませんか?」と言葉をはさんだ。「あまり…」と答えると「私どものペストリーはおいしいと評判なんです。クロワッサンもございます」。「じゃ、少し頂こうかしら」。「かしこまりました。みなさんで召し上がれるようにまん中にいろいろとご用意いたします。トーストも足りないようでしたら、すぐにお持ちいたしますので…」とニッコリほほえんだ。この笑顔はサービススタッフとして仕事をする彼が持って生まれた財産。気持ちの良い朝、爽快感を彼が演出してくれた。

ところが、しばらくすると、その彼がディレクトールから注意を受けているようだ。ディレクトールは厳しい目で何かを促すかのような手つきをし、声を荒げている。いったい彼はどのようなミスをしたのだろうかと見渡すが、その形跡らしきものは見当たらない。

サービスの現場に必要な人はサービスを提供するスタッフ

サービスの現場では、客の目があるところでスタッフに注意をしてはいけないと言われている。注意の場面を見たり叱責の声を聞いたりするのは、気持ちのよいものではないし、注意を受けたスタッフが平常心で客に接することは難しいはずだ。気持ちを切り替え、先ほどと同じ笑顔で彼が私たちに接することができるとすれば、彼の神経は相当タフである。

食事が済んだ。ゆっくりとコーヒーを飲みたいため、お皿を片付けてほしいとナイフとフォークを斜めに並べた。ディレクトールは何度か、私たちのテーブルの横を行き来したが、気付かないようだった。そして、やっと気付いたのか、テーブルに近づこうとした。ほとんど同時にあの若いギャルソンがテーブルに向かってきた。ディレクトールが彼に片付けるようにとジェスチャーで示した。「ペストリー、いかがでしたか?」。「とてもおいしかったです。頂いてよかった…」。「コーヒーのおかわり、いかがですか? すぐにお持ちいたします」。若いギャルソンは先ほどの叱責を私たちにはみじんも見せなかった。さすがプロ。ちょっぴり安心した。そして、コーヒーを飲みながら、はたと思った。ディレクトールは何のために、このダイニングにいるのだろう。客にサービスをするため? それともスタッフを指導したりチェックを入れたりするため? サービスを行わないスタッフこそ、サービスの場には不要なのではないだろうか。この朝、ディレクトールがダイニングで一番、不快な存在だった。

「ありがとうございました」。ダイニングを出るとき、若いギャルソンは最初と変わらぬ笑顔で私たちを見送ってくれた。「がんばってネ」、心の中で彼に声援を送り、ディレクトールに聞こえればいいなと私たちは少し大きな声で感謝を述べた。「ごちそうさま。ありがとう」。