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浅岡柚美の「磨こう! ヒューマンスキル」 » サービスにはなぜ、終わりがないのか?
よりよい人間関係を築くためのヒントサービス改善のためのヒント浅岡柚美プロフィール

サービスにはなぜ、終わりがないのか?

東京、青山に「カシータ」というレストランがある。大学院(ビジネススクール)で担当しているホスピタリティ・ビジネスの受講生のひとりが、すばらしいサービスだと発表に取り上げた。ならば…。受講生数人と授業の打ち上げをかねて観察に出かけることにした。受講生が幹事を引き受けてくれ、2ヶ月先にようやく予約が取れた。

全員がテーブルにそろったとき「こちらのシャンパンをご存じですか?」とメートル(給仕人)が乾杯のシャンパンのラベルを私に見せた。そこには、私の名前が入っていた。そして「サベラージュというものをなさってみませんか?」と私に勧めた。シャンパン・サベラージュとはサーベル(刀)を使ってシャンパンの栓をガラスの部分から打ち払うセレモニー。処女航海の安全を祈る儀式に始まったといわれている。練習を1回して本番。成功。いきなりのサプライズ。記憶に残るイベントとなった。

席をダイニングに移した。テーブルには一人ひとりにあてたメッセージカードと名前を刺繍したナプキンが置かれていた。「さすが、カシータですね。すごい」。驚く仲間もいたが、私は以前、居酒屋の宴会で同じような心遣いを経験していた。このカシータの演出は私には「カシータならありそうなこと」であり、驚くには至らなかった。

サービスの評価を期待と実際の体験の差、あるいは比によって示そうとする考えがある。すなわち、サービスの評価=実際の体験ス期待、あるいは、サービスの評価=実際の体験/期待、とする考えである。いずれも概念的な式であるが、実際に受けたサービスが事前期待よりも優れていなければ評価は高まらない。良いサービスに慣れた客や期待の大きな客を満足させる難しさが、ここにある。期待を超えるサービスを実現しなければ、客に満足や感動、驚きを与えることは難しい。サービスに完成は永遠にやってこない。

カシータの料理と親しみやすい心あたたまる過不足のないサービスは申し分のないものであった。さすが、やはりカシータである。期待どおりのことがきっちり行われた心地よさを私たちは感じていた。土砂降りであったため、車を呼んでもらい、車が来たという知らせで席を立った。カシータが入っているビルを出ようとしたとき「浅岡さま。本日はありがとうございました」。カシータのスタッフが3人、ビルの出口で大きな傘を手に待っていてくれた。カシータは20店舗ほどが入った11階建てのビルの3階にある。ビルの出口、それも雨にぬれないようにと見送ってくれたレストランは始めてであった。私が予想をしていなかったこと。それはサベラージュと最後の最後にやってきた。