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客を待たせる時間

あるお寿司屋さんに神戸在住の知人を案内した。

「テレビや雑誌によく出ているお店よね」と楽しみにしている様子。土曜日の13時過ぎ。ちょうど混雑している時間。予約をしていなかったので、案の定、13時45分ごろの案内になると言われた。

「ほかにも、近くにおいしいお寿司屋さんはあるけれど」と思いながら知人に「どうする?」と尋ねると「せっかくだから…」と言う。30分ほどウィンドウショッピングを楽しんで、言われた時刻より少し前に店に戻った。

客を待たせる時間

仲居さんから「では、あと少し待合室でお待ちください」と言われた。待合室として使われているフロアにはお客さんが十数名。私たちが言われた案内時間まではあと少し。まもなく案内されるはず…。しかし、四組、五組と名前を呼ばれるものの私の名前はなかなか呼ばれない。座席もなく、立ったままで待っているうちに14時を回った。あとどのくらい待たなければならないのかを尋ねようにも、仲居さんは案内するお客さんの名前を呼ぶとすぐに階段を降りていく。

知人は「さすが、お客さんが多いのね。お腹が空いたから余計においしく感じるわよ」と言ってくれる。そして、14時15分を過ぎて、ようやく名前が呼ばれた。最初にお店を訪れてから1時間以上も経っていた。しかし、仲居さんは全く悪びれたふうではない。「お待たせしました」の一言もない。席が空けばお客さんを案内する、それが彼女の毎日の仕事なのであろう。お客さんが待つのは当たり前のことに違いない。

1階のカウンターに案内される。板前さんは「ずいぶん、お待ちになりましたでしょう。本当に申し訳ございませんでしたね」とにっこりと迎えてくれた。仲居さんの愛想がないだけにほっとする。初めて、この店に案内してよかったと思った。板前さんは嫌いなものがないか、ご飯の量を尋ね、魚のおいしい季節や産地など、いろいろと話してくれる。知人も「やはり、おいしい」と喜んでくれた。おいしいものの力は絶大だ。待たされたことを忘れてしまい、お酒も手伝って気持ちよくお店を後にした。しかし、冷静に考えるとやはり変だ。

食事の後に、特に予定があるわけではなかったが、最初に1時間も待たなければならないと言われたら、ほかの店に行くことも考えた。食事であるから、仲居さんが予想した時間以上に時間を取ってしまうこともあるだろう。それでも、30分以上の誤差は、店側の効率性の論理、空席を作らないために待ち時間を短く告げているのではないか、と思ってしまう。このたび、ミシュランで星が付き名店と言われる店であるだけに残念に思う。