このシリーズでは、不定期ですが「より良い人間関係を築くためのヒント」を記します。
- 4 - わたくしたちは相手をどのように認識するのか?
わたくしたちが、相手をどのように認識し、どのような印象を持つのか、という問題は、社会心理学では「対人認知」「印象形成」というテーマで取り上げます。わたくしたちは、相手がどのような人であるのかを「主観で」認識することで、相手の取る言動の意味を考えたり、相手の今後の言動を予測したりすることができ、それによって自分が取るべき言動を決めることが可能となります。
Schneider らは、次のようなプロセスを経て対人認知、印象形成が行われると示しています。
- 注意:相手の存在に気づくこと
- 速写判断:カテゴリー化された外観や行動から直感的に、あるいはきわめてステレオタイプ化された判断をすること
- 帰属:相手がなぜ、そのような言動を取ったのかを知ろうとすること
- 特性推論:帰属の結果、ある特性Aを持っている人は、他の特性Bや特性Cも持っているだろう(あるいは持っていないだろう)と推測すること
- 印象形成:その人が持っている特性から全体的な印象を作り上げること
- 将来の行動の予測:その人が将来、ある特定の状況において、どのような行動を取るかについて予測すること
このように相手に注意を向けて、相手の将来の行動を予測するまでのプロセスを経るのは、相手にずっと「注意や関心」を向けている場合に限られます。わたくしたちは、相手に対して自らの目標に関連した側面にしか注意や関心を持たず、目標が達成されれば相手への注意や関心はすぐに消えてしまい、このプロセスは途中で停止してしまいます。
電車の中で、お年寄りが乗車したときに「席を譲ろう」とわたくしたちが考えるのは、「注意」「速写判断」を行うからです。そして、通常は、これ以上、そのお年寄りを観察して、この人はどういう人だろう・・・ということを考えることはありません。
でも、そのお年寄りが「ご親切に、どうもありがとうございます」などと丁寧に声をかけてくれ、頭も少し下げたような場合は、自分が先に電車を降りるときには、自分もそのお年よりも会釈をしあうこともありますよね。相手の「将来の行動の予測」をして自らの言動を決定しているのですね。
Schneider, D. J., Hastorf, A. H. & Ellsworth, P. C., 1979, Person perception 2nd ed., Cambridge, M. A.: Addison-Wesley.