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浅岡柚美の「磨こう! ヒューマンスキル」 » 隅々まで浸透させることのむずかしさ
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隅々まで浸透させることのむずかしさ

東京に単身赴任中の私が、福岡に戻った3月半ば、おしゃれなダイニング・バーに友人が誘ってくれた。ホームページを見ると「厳選した素材」「熟練の職人の技」「贅沢な空間」「くつろぎ」「最高のおもてなし」などの文字が躍っている。期待が膨らむ。そして…食事を終えた。それらの言葉は誇大ではなかった。お腹も気持ちも十分に満たされ、預けた手荷物とスプリングコートを受け取り、コートを手に持ったままタクシーで自宅に戻った。

翌日、10時過ぎ。東京に戻ろうとイスの背にかけたままにしていたコートを手に取ると、それは男性のもの。間違えてしまったのだ。帰りがけにもらった店のリーフレットを見て電話をかけたが留守番電話だった。予約を入れてくれた友人の名前と私の携帯の番号、これから東京に向かうが、手元のコートは友人に届けてもらうことを伝言に残した。

友人のオフィスに出向き、コートを預け、急いで航空機に飛び乗った。東京に着くと店と友人から伝言が入っていた。「本当に申し訳ございません。○○様と連絡を取りました。コートはすぐにお送りいたします」。男性コートの持ち主も今朝、気づいたらしい。店の人は、お菓子を手に友人のオフィスまで取りに来てくれ、深くわびたという。すぐに店に電話し、わたしのうっかりを詫び、コートは着払いで送ってくれるように申し出た。2日後、コートが元払いで送られてきた。薄い毛布に丁寧に包まれ、クッキーが同封され、自筆の手紙が添えられていた。「福岡での最後の夜の楽しいひとときを不快な思い出終わらせてしまい、お詫びのしようもございません。改めておもてなしをさせていただきたいと存じます。福岡にお越しの際は、また、いらしてください」。店側は終始、間違えたことの責任を私に求めなかった。見事な対応に感謝し、コートを受け取ったことを知らせようと手紙を書いてくれた人に電話をかけた。ところが…。

電話の女性はあまりにもそっけなかった。「ハイ」と応えるだけであった。手紙とあまりにも違う対応に戸惑うばかりだった。手紙の文章はだれか他の人が考えたのだろうか?

このできごとは、サービスに関するいくつかの示唆を与える。まず、エントランスがとても暗かったこと。店の雰囲気づくりもあるだろうが、(酔った客に対しても)間違いなく精算を行い、預かった手荷物を受け渡すには、ある程度の明るさが必要なはずだ。次に、午後にならないと直接、連絡が取れなかったこと。貴重品忘れなど、もっと切迫した事態に備え、この店のように複数店舗をかまえている規模であれば、夜から開店するのであっても10時ごろからは連絡が取れる手段が必要ではないだろうか。最後に、店の優れた「もてなし」のポリシーを従業員に徹底することの難しさ。手紙は何かを参考にすれば立派なものがかけるが対面ではそうはいかない。店が描く「最高のおもてなし」を隙間なく実現するには従業員への絶え間ない心と技、両方の教育が欠かせない。